映画【ハドソン川の奇跡】感想・ネタばれ / 英雄から容疑者へ・・・
この映画を一言で
ベテランのすごさと奇跡の実話
こんな時におすすめ
実話を元にした映画を見たいとき
飛行機系の映画を見たいとき
イーストウッドの映画が見たいとき
あらすじ
2009年1月15日、極寒のニューヨーク。160万人が住むマンハッタン上空850メートルで突如起こった航空機事故。全エンジン完全停止。制御不能。機長は高速で墜落する70トンの機体を必死に制御し、目の前のハドソン川に着水させ乗員乗客155名全員無事に生還させる。着水後も浸水する機内から乗客の避難を指揮した機長は国民的英雄として称賛される。だがその裏側では彼の判断をめぐり国家運輸安全委員会の厳しい追及が行われてた…。
https://filmarks.com/movies/65354
ーFilmarks あらすじよりー
感想 -ネタばれあり-
この映画は、2009/1/15にUSエアウェイズ1549便がハドソン川に不時着水した航空事故をもとにした実話の映画である。
ということなので、映画を見る前は不時着水時の緊迫なシーンがメインとして描いてると思いきや、航空事故後のシーンからストーリーが始まる。
もちろん不時着水のシーンは描かれており緊迫感を感じることができるだが、この映画は、事故後の原因追及に趣が置かれている。
当時、事件の話題性はかなり大きなもので、英雄扱いされていたサリーは困惑していた。自宅には大勢のマスコミが押しかけ、サリー自身もTVショーへ引っ張りだこで、一言一行に注目が集まっていた。
注目される苦しみは、サリーに精神的不安を与えていた。
飛行機がビルへ突っ込んでしまう夢を見たり、クラッシュしてしまったり、現実との区別がつかなくなってしまっていた。
そんな中で、国家輸送安全委員会(NTSB)による事故原因の解明が始まった。機体の破損状況やコンピュータ履歴から、当時の機体状況を再現してシミュレーション解析が行われ、結果はサリーの不時着水は間違えと判断された。
シミュレーションの結果、20回中20回ラガーディア空港へ帰還が成功したのだ・・・
英雄から容疑者になったサリーは自分の判断が間違っていたのかと悩み、自問自答する。
42年2万時間の操縦キャリアを持つベテラン操縦士サリーにも最初は新人であり師匠がいた。
師匠の言葉に "操縦は人生そのもの。何があろうとも操縦することを忘れるな" の言葉を思い出す。
また、当時アメリカ空軍大尉だったサリーは演習中の戦闘機で不具合が発生した時も、無事に帰還した。
これらのことを思い出す。
長年の経験から判断したことは間違っていないと断言できるが、記憶と記録が異なっている。
サリーは、事故発生時の状況とシミュレーションの状況では、ある ”タイミング” が違うことに気づく・・・
それは、機体の進路を決定したタイミングである。
シミュレーションでは人的要因が考慮されていなく、バードストライクが起きた瞬間に機体の進路を決め、空港へ引き返していたのだ。
その人的要因を加味して35秒後に機体の進路を決め、空港へ向かおうとするとどのパターンでも墜落してしまった。
この結果からサリーの判断は正しかったと証明される。
CVR(音声記録)と共に、事故時の描写が始まる。
このCVRの記録は、実際の音声を忠実に再現してあり緊張感がヒシヒシと伝わる。APU始動、QRH確認(両エンジン静止マニュアル)、管制塔とのやり取りなど、緊急事態にも関わらず、機長と副機長は焦らず冷静にこなしていく。とっさに現在の状況を判断して、ハドソン川への不時着水を成功させる。ベテランの人の判断というものは決してAIでも凌駕できないのではと考えさせる出来事でした。
DVDの特典映像である機長本人と副機長のインタビューでは、当時の考えや感情を語ってくれている。
QRH確認(両エンジン静止マニュアル)は本来上空3万フィートを想定して作成してあるものであり、当時はたったの3千フィートしかなかったことや、マニュアルが4ページもあったが冷静に行動できたこと。
エチオピア航空の不時着水失敗の映像が脳裏に浮かんだことなど。
機長は0.25秒の操作ミスで結果が違っていたかもしれないと話していた。
たったの208秒の出来事であるがサリーの左腕1本に乗員乗客155名の命がかかっていたことを考えると、とても濃い時間であり、それを余すことなく表現できているこの映画はすごいですね。さすがイーストウッドです。
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気になったこと
カナダガン
カナダガモともいう鳥で草食の渡り鳥であり、体長は75～110cm で翼幅は127～185cm、通常オスは約6.5kgである。
ja.wikipedia.org
翼と広げるとかなり大きな鳥ですね。
日本でのバードストライクの確率
僕は年に何回か飛行機に乗りますが、今まで一度もバードストライクに遭遇したことはありません。確率はいったいどのぐらいなのでしょう？
2016年の国土交通省の記録によりますと、
離着陸回数：2,479,234回
鳥衝突件数：1626回
→そのうち航空機損傷事案：40件
→そのうちエンジン/プロペラへの損傷：22件
ということから
機体に鳥が当たる(バードストライク)可能性は約0.0656%
そのうち機体が損傷する可能性は約0.0016%
そのうちこの映画のようにエンジン/プロペラへダメージがある可能性は約0.0009%
ということが分かりました。
しかしバードストライクが原因で2016年に航空事故になったケースはありません。機体が損傷しても無事に帰還しています。
この映画の事例はかなりの珍しいケースだということですね。
これで安心して飛行機に乗れます(笑)。
国土交通省2016年バードストライクデータ
https://www.mlit.go.jp/common/001131800.pdf
エチオピア航空の不時着水事故
特典映像で副機長が語っていたエチオピア航空の不時着水失敗の事故は下記リンクのものだと思われます。
ハイジャックが原因で不時着することになってしまっただなんで、考えられません。悔しい限りです。
ja.wikipedia.org
最後に
その道のプロはかっこいい
そんな人間になりたい
