映画【ナイト・オン・ザ・プラネット】感想・ネタばれ / それぞれ違う、夜とタバコの匂いがする5つのオムニバス
おしゃれでノスタルジックなオムニバス映画
『ナイト・オン・ザ・プラネット』(1991年)は、ロサンゼルス・ニューヨーク・パリ・ローマ・ヘルシンキの異なる場所、同じ時間で起こる物語をオムニバスとして繋げた映画です。5つの物語はどれもタクシーの中で繰り広げられます。世界には様々な人がいて、それぞれの人生が少し混じったり混じらなかったり。夜更かししたときの夜の匂いがしてくるようなおしゃれな映画です。
見終わったあとに少しノスタルジックになってタバコが吸いたくなる映画です。
ぜひご覧ください!
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ネタバレあり!感想・考察
それぞれの主題と感想
5つのストーリーが順番に流れるオムニバス映画ですが、この5つのストーリーにどんな主題が含まれているかを考えました。人間の5つの基本感情と印象的なタバコの視点から考察しました。唯一タバコが出てこないのが2つ目のストーリーであるニューヨークです。この点に着目しました。
ロサンゼルス
若い女性タクシー運転手コーキーは、映画のキャスティング・ディレクターであるヴィクトリアを乗せます。キャスティングが難航しているヴィクトリアは、コーキーに秘めている可能性を感じキャスティングを提案しますが、あっさり断られしまいます。なぜならコーキーは自分の人生を”楽しんでいる”からです。タクシードライバーで経験を積み、兄のような整備士になることを楽しみにして生きています。皆が憧れる(であろう)女優の道が前にあっても”楽しみ”を選びました。
これが人間の5つの基本感情の1つ目 ”楽しみ”です。
ニューヨーク
寒い街角で、ヨーヨーはブルックリンへ帰るためタクシーを拾おうとしますが、なかなか捕まらなく、”嫌気”がさしています。ようやく捕まえたタクシーを運転していたのは、東ドイツからやってきたばかりの新人ドライバーであるヘルムートです。おどおどしい運転にまた”嫌気”がさし、運転を交代するという大胆な選択をします。しかしヘルムートと話しているうちにヘルムートと打ち解けて”嫌気”が”楽しみ(友情)”に変わっていきます。
これが人間の5つの基本感情の2つ目”嫌気”ですが、タバコが登場していないこのストーリーは”嫌気”が変化して”楽しみ”に変わります。
パリ
大使に会いに行くという黒人の乗客二人の態度に”怒り”を感じたコートジボワール移民のタクシー運転手は、我慢ならず途中下車させてしまいます。次に乗せた若い盲目の女性は、自分が障碍者であることをまったく悲観することなく強く生きています。ドライバーが意図せず差別的な質問をしてしまいますが、それを嫌味っぽく言い返します。移民で黒人というマイノリティーを差別をされてきて卑屈になっている自分を、彼女の中に強い芯を感じたことで考え方を変えるきっかけとなると思ったが、直後に交通事故を起こして再び”怒り”を感じてしまう。タバコが登場していなかったら事故を起こさずそのまま”怒り”が変わっていたかもしれませんね(そういうストーリーもいいかと思います)。
これが人間の5つの基本感情の3つ目”怒り”です。
ローマ
ずっと独り言を言っているタクシー運転手ジーノは神父を乗せる。神父を相手にまたまたずっと独りで破廉恥な懺悔し始めるジーノだが、神父は体に異変を感じていつもの薬を飲もうとする。しかしジーノの乱暴な運転のせいで薬を落としてしまい薬を飲めず、発作を起こして死んでしまいます。それに気づいたジーノは急いで車を止め、神父を殺してしまったことに”恐れ”を感じ、逃走します。(サングラスをかけるシーンはセンス抜群です(笑))。ジーノがタバコを吸っていなかったら神父はむせておらず、発作も起きていなかったかもしれません。
これが人間の5つの基本感情の4つ目”恐れ”です。
ヘルシンキ
凍える街で無線連絡を受けたタクシー運転手ミカは、酔っ払った三人の男性を乗せます。同僚曰く、今日という日はアキにとって最も不幸な一日だったそうです。しかし、ドライバーのミカにとってアキの不幸は小さなものです。早産で生まれた子供を愛することを決めた瞬間に旅立たれてしまいます。このストーリーの序盤で無線を受ける前に噴水の周りをぐるぐる回りたくなる気持ちも分かります。
これが人間の5つの基本感情の5つ目”悲しみ”です。
5つのストーリーに5つの感情が隠されているのではないかと考察しました。唯一、タバコが登場しなかったニューヨークは、プラスの感情の”楽しみ”でした。
個人的総評
人間の5つの基本感情(楽しみ、嫌気、怒り、恐れ、悲しみ)をタクシーという限られた空間の中で、人のセリフだけでうまく表現しており、見終わった後にさまざまな感情を感じることができます。タバコ吸っているシーンは印象的でかっこよく見えます。禁煙中に見るのは危険ですね(笑)
評価:
最後に…
最後に5つのストーリーが繋がる系のオムニバスではなかったですね。
『ナイト・オン・ザ・プラネット』
概要
題名 :ナイト・オン・ザ・プラネット
原題 :Night on Earth
公開 :1992/4/25
国 :アメリカ
上映時間 :129分
ジャンル :ドラマ/オムニバス
あらすじ
ジム・ジャームッシュ監督によるオムニバス映画。ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの同じ夜を舞台に、タクシー運転手と乗客の間に起こった5つの出来事を描く。
-Filmarks あらすじより-
予告編
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『スリービルボード』(2018年)は、アメリカミズーリ州の田舎で起きた少女殺人事件をベースに物語が進んでいきます。少女を殺害された母親を中心に登場人物達の思いが錯綜し、事件の行方が思わぬ方向へ転がっていきます。最後まで手に汗握るサスペンスドラマです。第74回ベネチア国際映画祭では、脚本賞、トロント国際映画祭では観客賞、第90回アカデミー賞では主演女優賞・助演男優賞獲得しています。
最後まで展開に手に汗握り、見終わった後に考察したくなる面白さがある映画です。
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ネタバレあり!感想・考察
殺人事件の犯人は?
結局映画内では、ミルドレッドの娘アンジェラを殺した犯人は明かされることなく終わってしまいます。下記の作中に登場した人物の中で犯人を考察していきます。
①レッド(広告店の男)
ディクソン巡査にボコボコにやられながらも、同じ病室になった当の加害者ディクソンに悔し涙と悲しい涙を浮かべながらも優しくオレンジジュースを上げる心優しい青年です。優男でかっこいいですね。
しかし、少し違う視点で見てみます。物語が始まってすぐ出てくるのがこの優男。彼は最初の登場シーンで、自分の広告代理店の事務員であるパメラを本を見ているふりをして凝視している(陰で内なる欲望を満たす?)。その後、ミルドレッドから広告掲載の相談を受けるが、その文章(後述)だけで、”(あなたは)アンジェラ・ヘイズのお母さん?”と質問します。この時少し違和感を感じました。いくら町で起きた事件といえど被害者のフルネームを知っている?7か月も前なのに?と思いましたが、物語が進んでいくうちに小さく且つ人との繋がりがある町であり、事件があった(焼死体)と思われる場所が自分の管理する看板の近くとなれば名前を憶えていてもおかしくはないと考えます。
②チャーリー(ミルドレッドの元DV夫)
ミルドレッドの離婚したDV夫であり、現在は19歳の動物園もしくは乗馬クラブの馬を世話している女性と付き合っています。ミルドレッドの家を訪ねた時もカッとなり手を上げる・暴言を吐くなど暴力的な人物であると推察します。さらに、ミルドレッドの広告を酔った勢いで燃やしてしまったと言っています。この”燃やす”は焼死体を暗に示しているのでは?と考えましたが、ミルドレッドとアンジェラの話をしている時は悲しい顔をして悔しがっているため、チャーリーも白と考えます。
③ウィロビー所長
町の警察署長であり2人の娘の父親。町民からも人望が厚く、すい臓がんで先が長くないことは周知の事実であり周りの人々が気にかけてくれる人物です。先が長くなく闘病生活が家族の苦になると考え、自殺を選んでしまいます。ミルドレッドが名指しでウィロビー署長を非難する広告を掲げる中での自殺となってしまったため、作中でも大きな話題を生みますが、後にウィロビーからの手紙(家族・ミルドレッド・ディクソン宛)により、広告とは無関係と明言しております。実はウィロビー署長が犯人で事実が公になる恐怖から自殺した?と考えましたが、微妙ですね。広告代を1か月分払ったり、わざわざミルドレッドに手紙を書いたりして熱いおじさんでしたね。
④ディクソン巡査
ウィロビー署長が自殺したことを知り、向かいのレッドを窓から突き落としてボコボコにしたレイシストの男。郊外をパトロール中に3つの看板が塗装されていることを発見し、理由を荒々しく問い詰めるなど、ストーリーの序盤は怠惰で横暴な警官です。しかし、ウィロビー署長の手紙で考え方を一変。アンジェラ殺害事件の捜査ファイルを炎から命がけで守ったり、怪我を負いながらもバーで男のDNAを採取するなど事件解決へ尽力します。このことから白だと考えます。(レッド殺人事件未遂で逮捕されないのはどうかと思いますが…)
⑤軍人の男(DNA鑑定された男)
結論
ラストシーン後、ミルドレッドとディクソンはどうする?
⑤の軍人の男が住んでいるアイダホへ向かっている車内の中で、ミルドレッドとディクソンが ”彼を殺すこと"に対して"あんまり"と言っています。また、ミルドレッドが警察署を燃やしたことをディクソンに打ち明けた時、あっさり”おまえ以外に誰がやる?”と言われ作中で初めてミルドレッドが笑いました。その後”道々決めればいい"と車を走らせますが、3つの看板が太陽を向いている明るいシーンが描写されています。これはミルドレッドの心(感情)を表しており、自分の罪(放火等)を認めたことで新たな一歩を踏み出せるようになったということではないでしょうか?
このことからミルドレッドとディクソンは、男を殺さず帰ってくるのでは?と考えます。
個人的総評
1つの映画でこれほど色々な考察ができるのは演出・脚本共に最高の出来の映画ではないでしょうか?どの考察が正解・不正解ではなく、様々な考え方を聞きたくなる映画であり、まだまだ隠された秘密がありそうで見ごたえのある映画でした。
評価:
最後に…
アメリカの田舎町はこんなに犯罪や暴力が横行しているのか…?と感じました。そんなことはないと思いますが。
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概要
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あらすじ
最愛の娘が殺されて既に数ヶ月が経過したにもかかわらず、犯人が逮捕される気配がないことに憤るミルドレッドは、無能な警察に抗議するために町はずれに3枚の巨大な広告板を設置する。それを不快に思う警察とミルドレッドの間の諍いが、事態を予想外の方向に向かわせる。
-Filmarks あらすじより-
予告編
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この緊迫感と没入感をぜひ!
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ネタばれあり!感想・考察
スコフィールドとブレイクが選出された理由は?
実行しようとしている作戦が、実はドイツ軍が仕掛けた罠であり、それに気づいた将軍が1600人の命を救うべく、兵に伝令を命ずる…ということですが、スコフィールドとブレイクが選出された理由を考察していきます。
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伝令を命じられたのは2人だけ?
1600人の命がかかっているのに2人だけしか伝令を命じられていない?作中ではスコフィールドとブレイクに命ずるシーンしかありません。しかし、1600人という数の命がかかっていたら何部隊かに同じ伝令をして少しでも成功率を上げたいと思うのは僕だけでしょうか?もし、僕がエリンモア将軍(コリン・ファース)だったら多少の情報漏洩を恐れず伝令します(笑) 作中では描かれていないですが、きっと命を落としてしまった兵士がいると思うと心が痛いです。
結局作戦は成功?失敗?
スコフィールドが前線の部隊に着いた時、もう第1陣は準備を終え突撃を開始してしまいます。突入する兵士を遮り、走っていくシーンはこの映画を象徴するシーンです。
スコフィールドがマッケンジー大佐(ベネディクト・カンバーバッチ)に伝令を伝え、作戦は中止になります。野戦病院には突入で怪我を負ってしまった第1陣の兵士がいましたが、1600人全滅という最悪の状況を回避できました。しかも、ブレイクの兄ジョセフ中尉は生存しており、ブレイクの死は兄をも救いました。(ブレイクは意外にあっさり死んでしまったので驚きました。もちろんフィクションとしてのあっさりです)
スコフィールドの活躍により、大人数の命が救われたので作戦は成功ではないでしょうか?
個人的総評
ラストシーンでジョセフ中尉にブレイクの最期を告げ、”生を象徴するような大木”に寄りかかりながら家族の写真を見るスコフィールドの表情は、家族を思う気持ちと、生への願望をひしひしと感じます。
110分の中に緊張感をぎっしりと詰め込んで、最後まで手に汗握る戦争映画でした。
評価:
最後に…
中盤に出てくる激流の川が、少しチープに感じてしまいました…下からぼこぼこ空気を送っている感が…
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概要
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公開 :2020/2/14
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