U-MEIGA

名作×映画×うまいもの

映画【パレードようこそ】感想・ネタばれ / マイノリティーを団結力と行動で変える

『パレードへようこそ』デモ行進のシーン

『パレードへようこそ』©PATHE PRODUCTIONS LIMITED. BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE 2014. ALL RIGHTS RESERVED.

LGBT達と炭鉱夫の団結で世の中を変えろ

『パレードへようこそ』(2014年)は、イギリスを舞台に、サッチャー政権下での炭鉱夫のストライキ活動にLGBTの人達が協力するという実際に起きた活動を基にした映画です。当時のイギリスは現代ほどLGBTへの理解が少なく、かたや田舎町となると偏見や差別が多い時代でかつ不況な世の中でも、主人公たちのような勇気と団結力があれば世の中を変えることができる…。こういった行動する勇気を貰える映画です。作中も暗い雰囲気ではなく元気に進んでいきます。ぜひご覧ください!

まだ、映画をご覧になっていない方は、下部の概要・あらすじ・予告編へ!

ネタバレありの感想・考察はこのままスクロール!
目次(Content)でみたい内容チェックしてください!

ネタバレあり!感想・考察

登場人物について考える

マークについて

今作品で最も精力的に活動しているマークについては、実在した人物であり26歳という若さで亡くなってしまったと映画終盤で明かされています。HIVに感染したと診断されたその年に亡くなったとありましたが、詳細は、ニューモシスチス肺炎という日和見感染症(健康な動物では感染症を起こさない病原体が原因で発症する感染症)で亡くなったとありました(Mark Ashton - Wikipedia)。

作中のセリフの”人生は短い”という言葉は、まさに実際のマークを表しているようです。ストーリー中でもマークの機転と行動する勇気が皆の考え方を変え、大きなムーブメントを起こしていきます。

『パレードへようこそ』クラブでの記念撮影のシーン

『パレードへようこそ』©PATHE PRODUCTIONS LIMITED. BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE 2014. ALL RIGHTS RESERVED.
ジョーについて

この人物は映画のキャラの1人で、実在しない人物です。作中では、家族や親戚にLGBTであることをひた隠ししてますが両親にバレてしまいます。父親からは辛辣な言葉を投げかけられますが、その後のシーンで母親が意味深なセリフ ”私もそうだったわ。中略。職場の仲間やみなから隠れて秘密をもって生きるのよ” とあり、母親もLGBT?と匂わせる描写がありました。当時の時代背景でこれだけ差別されているので、ジョーの母親の世代では仲間内で打ち明けることさえままならない時代だったのでしょうか…?ジョーはその後、姉の結婚式を機に家出をします。マークの勇気を肌で感じて、自分も行動を起こたことで新しい人生(21歳のゲイの成人)を始めることができました。

 

当時の時代背景

サッチャー政権下での炭鉱

この映画はサッチャー首相の20カ所の炭鉱閉鎖案に抗議するストライキを題材にしていますが、歴史的な背景はどういったものだったのでしょうか?

サッチャーが首相になる前のイギリスは、重要産業国有化(石炭産業を含む)と社会保障制度等を中心とした福祉国家政策によって財政難が続いている中、さらにオイルショックに見舞われており不況でした。そしてサッチャーが首相になり、今でいうマニュフェストとして掲げていた「小さな政府」政策を実施します。これに影響を受けたのが炭鉱でした。

「小さな政府」は、公共事業の削減と民営化(規制緩和)等によって財政難の解消を目指す政策でした。その中の1つとして石炭産業の民営化(第2次世界大戦後から国営化されていた)があり、それに向け採算のない炭鉱20か所を閉鎖する案が出されます。それに反対するストライキ活動が、この映画の背景です。

『パレードへようこそ』女性達が生き生きしているシーン

『パレードへようこそ』©PATHE PRODUCTIONS LIMITED. BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE 2014. ALL RIGHTS RESERVED.
炭鉱の行く末

作中でも語られましたが、この全国炭坑夫労働組合(National Union of Mineworkers)によるストライキは、1985年3月3日の特別代表委員会で中止が決定され終了します。それに伴い多くの炭鉱も閉鎖されてしまいます。その後現代にいたるまで炭鉱夫の就業人数は減り続けています。

近年イギリスでは、石炭火力発電を2か月停止(イギリス、石炭火力発電停止から2カ月 再生可能エネルギーに押され - BBCニュース)という取り組みも行っており、1985年から約35年経った今では、石炭のメイン用途である火力発電も廃止の方向へ進んでいます。

個人的総評

マークやジョーのような行動する勇気をこれからもしっかり持って自分の”短い”人生を生きていきたいです。作中のダイのスピーチで、”自分の知らないところで自分を応援してくれる友がいることを知るのは最高の気分です”とありましたが、これからの人生、応援して応援されるような人物になりたいと感じました。何か新しい事をやろうとしている時や、難しい課題に直面した時に見返したくなる映画でした。

評価:★4つ

 

『パレードへようこそ』ドンがほほ笑んでいるシーン

『パレードへようこそ』©PATHE PRODUCTIONS LIMITED. BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE 2014. ALL RIGHTS RESERVED.

他のおすすめ映画

▶映画【ガタカ】感想・ネタばれ / 努力と夢で遺伝子を凌駕する

▶映画【スリービルボード】考察・ネタばれ / 3人の思いと犯人の考察

『パレードへようこそ』

概要

『パレードへようこそ』ジャケット画像

『パレードへようこそ』©PATHE PRODUCTIONS LIMITED. BRITISH BROADCASTING CORPORATION AND THE BRITISH FILM INSTITUTE 2014. ALL RIGHTS RESERVED.

題名   :パレードへようこそ

原題   :Pride

公開   :2015/4/4

国    :イギリス

上映時間 :120分

ジャンル :ドラマ/伝記

あらすじ

英国サッチャー政権下、境遇の違う人々をつないだ深い友情と感動の物語。不況と闘うウェールズの炭坑労働者に手を差しのべたのは、ロンドンのきらびやかなLGSMの若者たちだった! すべては、ロンドンに住む一人の青年のシンプルなアイデアから始まった。炭坑労働者たちのストライキに心を動かされ、彼らとその家族を支援するために、仲間たちと募金活動を始めたのだ。しかし、彼らが実はゲイの活動家(LGSM)だと知ると、寄付の申し出はことごとく断られてしまう。そこへ、勘違いから、唯一受け入れてくれる炭坑が現れる!彼らは、ミニバスに載ってウェールズ奥地の炭坑町へと向かうが…。

-Filmarks あらすじより-

https://filmarks.com/movies/59663?mark_id=104381863

予告編

www.youtube.com

参考文献 [ 2021/1/25 参考 ]

映画『パレードへようこそ』オフィシャルサイト

http://www.cetera.co.jp/pride/

Mark Ashton - Wikipedia

https://en.wikipedia.org/wiki/Mark_Ashton

日和見感染症 - 健康長寿ネット

https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/kansenshou/hiyorimikansen.html

世界史の窓 - サッチャー

https://www.y-history.net/appendix/wh1701-045.html

 神戸大学 櫻庭 涼子. 「炭鉱閉鎖後の地域再生・雇用政策」. 『フィールド・アイ』. 2011/7,  p.71-72

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2011/07/pdf/071-072.pdf

秋田大学 大西 洋一.「1984 年の記憶 ー炭鉱ストライキと現代英国表象文化ー」.『教養基礎教育研究年報』. 2019年, P45-54